●現在,ヒトに感染するコロナウイルスは7種類確認されている.●通常のコロナウイルスはかぜ症候群〔p.94〕の原因ウイルスとして●ここでは,コロナウイルスの変異種による新興感染症である,●ワクチンの接種は,COVID-19の発症予防と重症化予防に有効であると考えられている.●新型コロナワクチンとして,2024年11月現在,主にmRNAワクチンが用いられている.病原性低病原性高形An Illustrated Reference Guide呼吸器感染症+αもっとわかる ●免疫細胞がスパイク蛋白質を抗原として認識し,細胞性免疫〔病⑥p.28〕と液性免疫〔病⑥p.22〕が獲得される.●mRNAは接種者の細胞内に取りこまれ,細胞内でスパイク蛋白質がつくられる.●新型コロナウイルスのスパイク蛋白質の設計図となるmRNAを脂質の膜で包んだものを接種する.●発熱,咳嗽で発症し,咽頭痛や筋肉痛,下痢などが●重症化すると肺炎が急速に進行し,ARDS,腎不全,●無症状例から軽症例,重症例まで様々な臨床像を示す.●発熱,悪寒,筋肉痛などの全身症状で発症し,咳嗽,呼●多くはその後軽快するが,約20%で重症化しARDS●発症者ほぼ全例で胸部X線にて肺炎像を認める.●気道分泌物などの検体からのウイルス分離(SARSでは消化管,糞便中からもウイルスが検出される)●ウイルス遺伝子の検出(PCR法)●利用可能なワクチンはない.●初期対応における医療従事者の標準予防策および飛沫感染・接触感染予防策の徹底が求められている.●mRNAワクチン:mRNA vaccine ●細胞性免疫:cellular immunity ●液性免疫:humoral immunity ●重症急性呼吸器症候群(SARS):severe acute respiratory syndrome ●中東呼吸器症候群(MERS):middle east respiratory syndrome ●急性呼吸窮迫症候群/急性呼吸促迫症候群(ARDS):acute respiratory distress syndrome ●ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):polymerase chain reaction新型コロナウイルス感染症(COVID-19)Supplement107 液性免疫と細胞性免疫を誘導 mRNAワクチン知られており,飛沫感染により軽微な上気道炎を引き起こす.●しかし,ときに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などの病原性の高い変異種が生じ,重篤な呼吸器症状を引き起こす.重症急性呼吸器症候群(SARS)および中東呼吸器症候群(MERS)について解説する.その他のコロナウイルス感染症接種mRNAワクチンのしくみ新型コロナウイルスmRNA(設計図)スパイク蛋白質SARSとMERS原因微生物主な発生地域流行期間感染源感染経路飛沫感染・接触感染(感染動物−ヒト,または家庭内や医療機関でのヒト−ヒトにおける感染)市中感染あり(航空機内感染の報告あり)2〜10日潜伏期間不顕性感染吸困難がみられ,しばしば下痢などの消化器症状も認める.症状や多臓器不全をきたす.重症化リスク致死率診断治療予防mRNAワクチン脂質ナノ粒子SARSSARSコロナウイルス(SARS-CoV)中国南部(香港を含む)2002〜2003年コウモリ,ハクビシン,ヒトほぼない高齢者や,糖尿病,腎不全などの基礎疾患がある患者約10%特異的な治療法はなく,対症療法を行う.接種者接種者の細胞コロナウイルスの種類ウイルスHCoV-229EHCoV-OC43HCoV-NL63HCoV-HKU1SARS-CoVMERS-CoVSARS-CoV-2中東,韓国(中東からの輸入感染)2012年〜ヒトコブラクダ,ヒトみられる.多臓器不全をきたす.細胞性免疫液性免疫疾患かぜ症候群〔p.94〕重症急性呼吸器症候群(SARS)中東呼吸器症候群(MERS)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)MERSMERSコロナウイルス(MERS-CoV)なし2〜14日多い20〜35%
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