病3-5版_web立ち読み用
24/34

●前葉炎ではACTH>TSH≒GH>LH/FSH>PRLの順で分泌低下の頻度が高く,それらに伴う易疲労感や無月経などが症状として現れやすい.●後葉炎ではADHの合成・分泌の低下に伴う中枢性尿崩症の症状を呈する.●炎症部位の腫大によって頭痛や,視交叉圧迫による視力・視野障害などの下垂体腫瘍に類似した症状〔p.210〕を呈する.●前葉炎,後葉炎,汎下垂体炎のいずれかを呈する.●前葉炎は妊娠末期,産褥期の女性に好発する.●近年,免疫チェックポイント阻害薬の使用後にACTH分泌不全を中心とする前葉炎(免疫関連有害事象〔irAE〕の一種)が高頻度で発症することも知られている.●急性期には一般炎症所見(CRP↑,赤沈↑,白血球↑)が現れることがある.̶●●●̶●●副腎皮質刺激ホルモン(ACTH):adrenocorticotropic hormone ●甲状腺刺激ホルモン(TSH):thyroid-stimulating hormone ●成長ホルモン(GH):growth hormone ●黄体形成ホルモン(LH):luteinizing hormone ●卵胞刺激ホルモン(FSH):follicle-stimulating hormone ●抗利尿ホルモン(ADH):antidiuretic hormone ●易疲労感:easy fatigability ●無月経:amenorrhea ●多尿:polyuria ●多飲:polydipsia ●口渇:thirst ●尿崩症(DI):diabetes insipidus ●頭痛:headacheAn Illustrated Reference Guide症状●リンパ球性下垂体炎 236などなど臨床症状での分類●❶下垂体前葉炎ACTH,TSH,GH,低下するホルモン分泌機能異常に易疲労感,低Na血症,よるもの腫大によるもの(頭痛,視交叉圧迫による視力・視野障害)診断●本疾患は病理学的診断名であるので,原則として病理所見が必要である.●主症候と検査・画像所見はいずれも非特異的であり,病理所見が当てはまれば確定診断となる.下垂体機能異常の検査所見前葉炎後葉炎汎下垂体炎臨床症状類似疾患下垂体炎疑い一般検査,内分泌学的検査確定診断●❸汎下垂体炎●❷下垂体後葉炎多尿,多飲,口渇(尿崩症症状)無月経など下垂体腫瘍類似症状疑い中枢性尿崩症に関する検査所見画像検査所見最近は疾患概念や臨床経過,MRI所見が蓄積されてきたので,典型例の場合は病理検査を行わないフローで本症と臨床診断される症例が増えています.内分泌専門医病態での分類原発性(一次性)二次性〈全身性〉●肉芽腫性疾患●IgG4関連疾患〔病⑥p.124〕 など〈下垂体近傍の疾患〉●ラトケ囊胞に伴う炎症 下垂体前葉機能低下症状〔p.220〕●全身倦怠感*●易疲労感*●産後の無月経持続 など*主に副腎不全の症状であるが,産褥期の不定愁訴と誤認されることもあり,注意が必要.リンパ球の浸潤がみられる. 炎症の部位と症状について 概要●下垂体に炎症が起きると,炎症部位に準じたホルモン分泌能低下や,炎症部位の腫大が起こる.●病態での分類として,原発性(リンパ球性下垂体炎など)と二次性(肉芽腫性疾患,IgG4関連疾患など)に分けられる.●また,臨床症状での分類として,炎症部位により,❶前葉炎,❷後葉炎,および炎症が下垂体全体に波及した❸汎下垂体炎に分けられる. 原発性下垂体炎の代表例 リンパ球性下垂体炎確定病理所見●●HE染色LH/FSH,PRLMRIで病変確認ADH監修岩﨑 泰正写真提供:法木 左近視床下部-下垂体疾患下垂体の炎症性疾患

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る