病10-4版_立ち読み
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●生物学的結紮:biological ligature ●弛緩出血:atonic bleeding ●子宮内反症:uterine inversion ●子宮破裂:uterine rupture ●頸管裂傷:cervical laceration ●腟裂傷:vaginal laceration ●消費性凝固障害:consumption coagulopathy ●羊水塞栓症:amniotic fl uid embolism ●妊娠高血圧症候群(HDP):hypertensive disorders of pregnancy ●新鮮凍結血漿(FFP):fresh frozen plasma●分娩時には,血流の豊富な胎盤部あるいは産道からの出血により,●欠乏する凝固因子として最も問題になるのは,フィブリノゲンである.●分娩時大量出血の際には,出血に加えて妊娠中の凝固亢進状態やDICを伴うため, フィブリノゲンの欠乏をきたしやすい.そのため,凝固因子の補充として,早期の 新鮮凍結血漿(FFP)の投与が必要である.●分娩の際には,強い子宮収縮とともに,狭い産道を胎児が通過する.●分娩が急速に進行すると,産道が急激,かつ過度に伸展され,損傷が起こる.●妊娠中は骨盤内の血管が怒張しているため,血管が断裂しやすい.●出血の主な原因を次に示す.●胎盤には,子宮から無数の血管を通じて多量の血液が流れている.●胎盤が剝離する際には,通常は子宮筋層の収縮により血管が圧迫され(生物学的結紮),そこに血栓が形成されて血管が閉じられる.●何らかの理由で子宮筋層の収縮が起きない場合,あるいは血管に血栓が形成されない場合,大量出血となる. ■子宮破裂 ■頸管裂傷 ■腟・会陰裂傷●出血の原因として,この他に,DICを主体とする疾患があ分娩の異常分娩時大量出血●消費性凝固障害により子宮内の血管に血栓が形成されず,出血が続く.線溶活性化凝固活性化●胎盤剝離面からの出血,産道の損傷〔前項〕●妊婦は凝固能の亢進した状態にあり,DICが起こりやすい.●DICの進行によりさらに出血が助長されるため,迅速な対応が必要である.●DICをきたす基礎疾患には図のようなものがある.また,出血性ショックからDICをきたす場合(胎盤剝離面からの出血,●輸液,赤血球製剤のみが投与されると,循環血液量は増えるがフィブリノゲンは補充されず,フィブリノゲン濃度はさらに低下する.●一定の値を超えて低下すると,止血不●大量出血の際には,血球成分とともに●通常,血中には十分な量のフィブリノゲンが存在し,血小板と結合して止血を行う.305An Illustrated Reference GuideFibFibFibFibFibFibFibFib 主に胎盤剝離面と産道損傷部から起こる 突発的な大量出血 出血が止まらない DIC●DICは,血管内で凝固が活性化され,全身の微小血管に血栓が多発する病態である.さらに,血栓形成により血小板や凝固因子が消費される結果,消費性凝固障害をきたし,出血傾向がみられる〔p.318〕. 大量出血時に凝固因子が補充されないと生じる 希釈性凝固障害●大量出血の治療として輸液,赤血球製剤のみを投与すると,凝固因子は補充されないため,凝固因子の欠乏をきたし,突然大量の出血をきたす場合がある.子宮筋層胎盤血管胎盤の剝離剝離部の出血出血性ショック出血⬇血漿中のフィブリノゲンも失われる.●妊娠中の凝固能亢進やDICにより,凝固・線溶系が活性化し,フィブリノゲンが消費され,さらに失われる.る〔次項〕.DICDICをきたす疾患●羊水塞栓症●常位胎盤早期剝離●HELLP症候群●妊娠高血圧症候群正常血栓出血⬇凝固・線溶系が活性化能となる(希釈性凝固障害).胎盤剝離面からの出血 ■弛緩出血 ■前置胎盤 ■癒着胎盤 ■子宮内反症産道損傷〔前項〕)がある.凝固障害を引き起こす.これを希釈性凝固障害という.血液フィブリノゲン凝固・線溶系が活性化産道の損傷多量の性器出血止血輸液赤血球製剤フィブリノゲンが欠乏し,止血不能となる.

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