病10-4版_立ち読み
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●分娩時大量出血:massive obstetric hemorrhage ●分娩時異常出血:intrapartum abnormal hemorrhage/intrapartum abnormal bleeding ●妊産婦死亡:maternal death ●希釈性凝固障害:dilutional coagulopathy ●播種性血管内凝固(DIC):disseminated intravascular coagulation ●凝固因子:coagulation factor●“Obstetrics is bloody business.”といわれるように,産科において,出血は最も高頻度にみられる症状の1つである.しかし,ときに母児の生命に関わる危機的な大出血に急速に進展することがあり,速やかな 対応が必要である.●わが国での分娩時出血量の90パーセンタイル値*は,表のように報告●しかし,分娩時の出血は羊水の混入や腹腔内出血などの評価が困難な●これまで,「分娩時異常出血」は出血量500mL以上と国内外で定義されていた.しかし,多くの例で500mLを超える出血がみられること,多胎,帝王切開など分娩状況により出血量に違いがあることから,定義について議論が続いていた.現在では出血量だけでなく,バイタルサインの異常(特にSI〔p.307〕)を考慮して「異常」を判断することとされている.●妊産婦死亡の約23%は出血が原因といわれる.●約300人に1人の割合で,生命に危険が及ぶような●通常の出血と異なる産科出血の特徴として,次の2つが挙げられる.●2つの病態が重なって,制御不能な大出血に陥るため,迅速な対応が必要である.●特にDICは産科出血に特徴的で,重要である.●分娩に伴う胎盤や産道の損傷などから,急激な出血が起こりうる.●羊水や胎盤の成分により凝固因子がまず消費され,止血機能障害によりDICが起こる.分娩の異常304An Illustrated Reference Guide8001,000妊産婦死亡症例検討評価委員会,日本産婦人科医会:母体安全への提言2016 Vol.7.2017,p.11より改変2,0003,0004,0005,000日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会 編:産婦人科診療ガイドライン産科編2017.日本産科婦人科学会,2017,p.214より改変 “Obstetrics is bloody business.” 分娩時大量出血とは 出血は死因の原因として最多 妊産婦死亡の原因●妊産婦死亡は著明に減少したが,出血はいまだに 2つの特徴 産科出血の特徴正常分娩(経腟)での出血量は,多くは800mL以下.出血量(mL)0分娩時出血量の90パーセンタイル値されている.(*出血の少ない順から数えて90%に位置する値)ことなどから,正確な評価は難しいことに注意が必要である.母体死亡の主要原因である.出血が起こるといわれている.●❶突発的な大量出血●❷播種性血管内凝固(DIC)病態によっては,ときに数千〜数万mLに及ぶ大出血となることがある.単胎多胎妊産婦死亡の原因別頻度(277例)その他8%偶発7%感染症7%肺疾患8%心・大血管疾患10%不明9%希釈性凝固障害産科医妊婦の循環血液量は,5,000mL前後(非妊娠時体重50kgとして)ですが,ときに輸血した分も大量に出血し続け,全身の血液が何回も入れ替わる量の10,000〜20,000mLの出血となることもあります.経腟分娩 800mL 1,500mL帝王切開 1,600mL 2,300mL産科危機的出血23%脳出血15%羊水塞栓(心肺虚脱)13%制御不可能な大出血監 修金山 尚裕分娩時大量出血

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