● 遠隔転移,主要血管(腹腔動脈,上腸間膜動脈など)への浸潤がないもの.切除可能境界(BR)では術前補助療法を行い,癌の遺残のない切除が可能な場合に外科的切除を行う.● 膵頭部癌に対しては,膵頭十二指腸切除術(PD)+リンパ節郭清+消化管●膵体尾部癌に対しては,膵体尾部切除術+リンパ節郭清が基本.● 化学療法は,ゲムシタビン単剤,S-1単剤,FOLFIRINOX療法, またはゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法を用いる.● 化学療法は,FOLFIRINOX療法,またはゲムシタビン+nab-パクリタキセル併用療法を行う.全身状態や年齢などからこれらが適さない場合,ゲムシタビン単剤,S-1単剤などを用いる.S-1 ●腫瘍マーカーの膵癌検出感度は,CA19-9が70~80%と報告されているが,進行癌を除くと陽性率は低く,膵癌の早期検出には有用でない.●血中膵酵素の上昇は,膵管狭窄に伴う随伴性膵炎によるものであり,膵癌に特異的ではない.随伴性膵炎はMRIのT1強調脂肪抑制像で,低信号域として描出される.●糖鎖抗原(CA):carbohydrate antigen ●SPan-1:s-pancreas-1 ●DUPAN-2:pancreatic cancer-associated antigen-2 ●癌胎児性抗原(CEA):carcinoembryonic antigen ●核磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP):magnetic resonance cholangiopancreatography ●内視鏡的逆行性膵胆管造影法(ERCP):endoscopic retrograde cholangiopancreatography ●超音波内視鏡(EUS):endoscopic ultrasonography ●切除可能境界(BR):borderline resectable ●膵頭十二指腸切除術(PD):pancreaticoduodenectomy 438〔p.438〕放射線感受性を高める抗がん薬を用いた,化学療法と放射線治療を同時進行で行う治療法.食道癌,膵癌,肺癌などの治療で行われる.〔p.438〕一般名はテガフール・ギメラシル・オテラシル.5-FUのプロドラッグであるテガフールに,ギメラシルとオテラシルを配合することにより,5-FUの効果を高め,さらに副作用を軽減することを目的として開発された経口抗がん薬.胃癌,胆道癌,膵癌などの治療に使用される〔p.406〕.CA19-9↑,SPan-1↑,DUPAN-2↑,CEA↑などを認める.〈膵癌の腫瘍マーカー〉➡膵癌と診断する.● 確定診断に至らない場合には,ERCP下または超音波内視鏡(EUS)ガイド下治療切除可能性分類によって治療方針を決定する.⒈切除可能例:術前化学療法+外科的切除+術後化学療法再建法を行う.膵癌とは,一般的に膵臓に生じた上皮性の悪性腫瘍のうち,外分泌腫瘍で膵管上皮由来の浸潤性膵管癌を指す.組織学的には腺癌が大部分である.早期発見が難しく,症状出現時には進行癌であることが多いため,予後は極めて不良である.慢性膵炎や糖尿病,喫煙などが発症の危険因子である.高齢者に好発し,やや男性に多く,膵頭部癌が約60%を占める.〈やや男性に多い〉〈進行癌で発見されることが多い〉急激な糖尿病の発症または悪化などがみられる. 〈糖尿病の先行発症が半数以上にみられる〉ypovascularな腫瘍〉intro.MINIMUM ESSENCE❶好発:高齢者 ❷腹痛,黄疸,腰背部痛,体重減少,消化不良, ❸血液検査で,膵酵素上昇(アミラーゼ↑,リパーゼ↑),胆道系酵素上昇,❹腹部超音波検査で,膵管の拡張,低エコーの腫瘤,小囊胞などを認める.❺腹部造影CT検査で,低吸収域の腫瘤,膵管の拡張などを認める.〈hハイポバスキュラー❻MRCPやERCPで,膵管・胆管の狭窄,途絶,拡張などを認める.での細胞診・組織診を行うことが望ましい.⒉局所進行切除不能例(UR-LA):化学療法(化学放射線療法)⒊転移切除不能例(UR-M):化学療法⒋姑息的治療,支持・緩和療法a.閉塞性黄疸:胆管ステント留置,胆道ドレナージ,胆道バイパス術b.消化管閉塞:消化管バイパス術c.疼痛:オピオイド(モルヒネなど),腹腔神経叢ブロック など化学放射線療法 ゲムシタビン 〔p.438〕代謝拮抗性抗がん薬で,肺癌,膵癌などに対して有効性が認められている.遺伝性膵炎 〔p.439〕同一家系内に2世代以上にわたって3名以上の患者がみられる原因不明の膵炎で,多くは10歳以下に発症し,腹痛発作を繰り返す再発性の膵炎である.常染色体優性遺伝で浸透率は約80%.pancreatic cancer監 修土田 明彦膵癌C25
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