がんみえ
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●拡大内視鏡や超音波内視鏡により深達度(T因子),CTなどによりリンパ節転移(N因子),他臓器転移(M因子)を評価し,治療方針を決定する.手術療法を行う場合,注腸造影やCTコロノグラフィによる病変部位の診断が術式決定に重要である.●原発腫瘍(T):tumor ●コンピュータ断層撮影〔法〕(CT):computed tomography ●リンパ節(N):lymph node ●遠隔転移(M):distant metastasis ●がん胎児性抗原(CEA):carcinoembryonic antigen ●糖鎖抗原19-9(CA19-9):carbohydrate antigen 19-9 ●CTコロノグラフィ:computed tomographic colonography ●ヘモグロビン(Hb):hemoglobin●免疫学的便潜血検査による検診にて無症状で発見される例も多い.●腹痛,便秘・下痢,便柱狭小化などが発見契機となることもある.●大腸がん(腺がん)の腫瘍マーカーとしてCEA,CA19-9がある.●早期がんと腺腫の鑑別や深達度の診断には拡大内視鏡によるpit patternの観察が有●現在では,注腸造影の代わりにCTコロノグラフィが行われることが多い.その理由として,注腸造影に熟練した放射線技師・医師の不足や,CTコロノグラフィの方が検査の所要時間が短く,飲用する下剤が少量で済むなど利点が大きいことが挙げられる.●大腸がんでは,原発巣以外のがんが同時期に生じる症例(同時性がん)が5%程度に●日本人のがんによる死亡数のうち,大腸がんは男性で3位,女性で1位である(資料:●ステージ別の5年相対生存率は,ステージⅠ:95%,Ⅱ:88%,Ⅲ:77%,Ⅳ:19%である(資料:国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」〔2013-14年診断例〕).*粘膜下層浸潤が1mm以深(T1b)の場合,従来は内視鏡治療後に外科的追加切除を行うことが基本であった.しかし,切除断端のがん細胞,脈管侵襲などといった他の条件(転移の危険因子)が全て陰性の場合,T1bであっても転移の可能性は極めて低いため,内視鏡治療のみで経過観察をする症例が増加している〔p.339〕. +簇ぞくしゅつ出 intro.Typical Case❶60歳代の女性.❷3ヵ月前から,便に血液が付着していることに気づいた.❸ここ1ヵ月は便秘傾向である.❹眼瞼結膜はやや蒼白である. ❺大腸内視鏡検査で,周堤を有する潰瘍性病変を認める.❻注腸造影で,不整な狭窄像を認める. 治療方針332〔p.332〕肉眼では見えない程度の微量な血液が便中に含まれたものであり,消化管出血を示唆する.大腸がんでは,がん表面を便が通過する際に擦れて出血を起こし,便潜血を生じうる.〔p.332〕大腸の陰窩の開口部をpitといい,粘膜表面からみたpitの形態や配列をpit patternという.がんや腺腫には特有のpit patternがあるため,これを拡大内視鏡で観察することで病変の良悪性を判断し,悪性(がん)であればその深達度を推定することができる〔病①p.215〕.〔p.339〕組織学的な腫瘍の浸潤様式を表す用語のひとつで,がん発育先進部間質に浸潤性に存在する単個または5個未満の構成細胞からなるがん胞巣と定義されている.➡大腸がんを考える.●確定診断には生検を行う.大腸に発生する悪性腫瘍で,部位により結腸がん,直腸がんに分けられる.組織型はほとんどが腺がんである.病期(進行度)ステージ0粘膜下層ステージⅠ浸潤ステージⅡステージⅢ原発巣・転移巣のいずれも切除可能ステージⅣ切除不能用である〔病①p.215〕.みられる.厚生労働省:人口動態統計.2019).〈貧血の徴候〉〈apple core sign〉1mm未満1mm以深*手術療法監修樫田 博史治療法内視鏡治療手術療法術後補助薬物療法薬物療法pit pattern 便潜血 便潜血検査 〔p.332〕大腸がんのスクリーニングとして行われる検査.血中のヘモグロビン(Hb)を,化学物質を用いて検出する化学的便潜血検査(化学法)と,ヒトHbに特異的な抗体を用いて検出する免疫学的便潜血検査(免疫法)がある.検査前の食事制限が不要などの利点から免疫法が主に用いられ,一般的に2日分の便を採取する(免疫2日法).病❶p.208colorectal cancer大腸がん

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