薬4-1版_立ち読み
14/28

●消化管運動を亢進させる●一般的に経口薬は消化管内で溶解し,主に小腸から吸収される〔p.74〕.この吸収の過程が併用薬の影響を受け,薬物の吸収速度や吸収量が変動することがある.●吸収の過程で相互作用が生じる代表的な薬物の組み合わせと,その機序を次に示す.●GER(薬物が小腸へ到達する速度)が上昇することで,一般に吸収速度が上昇する*1.●GERが低下することで,一般に吸収速度が低下する*1.●酸性薬物●消化管運動を抑制する薬物●胃内pH上昇により酸性薬物の分子形が減少することで,一般に胃粘膜からの吸収量が減少する.●塩基性薬物●ビスホスホネート製剤●テトラサイクリン系抗菌薬●ニューキノロン●制酸薬●H2受容体拮抗薬●プロトンポンプ阻害薬●多価金属陽イオン(Fe2+,Ca2+,Mg2+,Al3+)含有薬■鉄剤■酸化マグネシウム●胃内pH上昇により塩基性薬物の分子形が増加することで,一般に胃粘膜からの吸収量が増加する*2.●消化管内で難溶性の複合体(キレート)を形成することで,吸収量が減少する.●ワルファリン●プラバスタチン●イコサペント酸●インドメタシンファルネシル●陰イオン交換樹脂■コレスチラミン■コレスチミド■セベラマー金胆●陰イオン交換樹脂(レジン)が陰イオン性薬物を吸着することで,吸収量が減少する.●陰イオン交換樹脂が胆汁酸を吸着することで,胆汁酸により可溶化される薬物の吸収量が減少する.●球形吸着炭が薬物を非特異的に吸着することで,吸収量が減少する.(p.209を参照のこと)●ジゴキシン●経口避妊薬(エチニルエストラジオールなど)●球形吸着炭●抗菌薬●腸内細菌が減少することで,腸内細菌による不活性化が生じにくくなり,吸収量が増加する.●腸内細菌が減少することで,腸肝循環〔p.123〕が生じにくくなり,再吸収量が減少する.*1トランスポーターにより輸送されるリボフラビンや難溶性薬物は,GER上昇により吸収速度が低下,GER低下により吸収速度が*2難溶性塩基性薬物であるイトラコナゾール,ゲフィチニブ,エルロチニブ,アタザナビルなどは,胃内pH上昇により胃内での溶*3影響を与える薬物として示した多価金属陽イオン含有薬の吸収量も減少する.酸化マグネシウムなど,吸収されずに作用を示す〔p.84〕商品名●モルヒネ塩酸塩水和物:アンペック,オプソ,パシーフ ●モルヒネ硫酸塩水和物:MSコンチン ●酸化マグネシウム:酸化マグネシウム ●コレスチラミン:クエストラン ●コレスチミド:コレバイン ●セベラマー塩酸塩:レナジェル,フォスブロック ●ワルファリンカリウム:ワーファリン,ワルファリンK ●プラバスタチンナトリウム:メバロチン ●イコサペント酸エチル:エパデール,エパデールS ●インドメタシン ファルネシル:インフリー ●球形吸着炭:クレメジン ●ジゴキシン:ジゴキシン,ジゴキシンKY,ジゴシン,ハーフジゴキシンKY➡経口薬の薬効に影響を与える 吸収過程の相互作用Mg金204pH⬆pH⬆GER低下要因胃内容排出速度(GER)〔p.84〕上昇胃内pHの上昇(アルカリ化)キレート形成*3吸着小腸のP-糖タンパク質阻害・誘導腸内細菌叢の変化上昇する.解性が低下するため,小腸での吸収量が低下する.薬物の場合は薬効に影響はないが,鉄剤など,吸収されて作用を示す薬物の場合は薬効が低下することがある.吸収過程への影響薬物キレート溶解している吸着分解されない影響を与える薬物の例薬物■コリン作動薬■ドパミンD2受容体拮抗薬■抗コリン薬■抗ヒスタミン薬■三環系抗うつ薬■モルヒネ分子形⬇分子形⬆形成難溶性溶解できない吸着影響を受ける薬物の例(経口薬全般)(経口薬全般)系抗菌薬エチル(経口薬全般)薬物動態学的相互作用

元のページ  ../index.html#14

このブックを見る