薬1-2版_立ち読み
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●痛みは,組織を損傷しうる刺激,または組織損傷による,不快な感覚・情動体験である.●痛みを抑えたい場合,鎮痛薬などを投与する薬物療法,局所麻酔薬などを注射する神経ブロック療法,手術療法,リハビリテーション,精神・心理療法などを行う.全身麻酔薬/鎮痛薬❹3次ニューロンにより大脳皮質の知覚野へ情報が伝達されると,痛みとして感知される.3次ニューロン●痛み刺激は,末梢から中枢に至る上行性痛覚伝達系(外側脊髄視床路〔病⑦p.219〕)で伝達され,痛みとして感知される.●一方,脳から脊髄に至る下行性痛覚抑制系〔p.262〕もあり,痛みを抑制する働きをもつ.●鎮痛薬などにより下行性痛覚抑制系が刺激されると,痛みが弱まる.2次ニューロン1次ニューロン※1次ニューロンの知覚神経線維のうち,Aδ線維は即時痛,C線維は遅延痛を伝える〔p.82〕.※痛覚伝導路の2次ニューロンには,急性の痛みを伝達する新脊髄視床路(外側脊髄視床路)と,持続性の遅延痛を伝達する旧脊髄視床路(前脊髄視床路)がある.どちらも脊髄後角から視床へ痛みを伝達するが,旧脊髄視床路は延髄でシナプスを形成する.words & termsがん性疼痛 〔p.124〕がんは,30年以上にわたり日本人の死因の首位である.経過中に75%前後の患者が中等度から高度の痛みを生じる.がんによる身体の痛みとして,①がんが直接の原因となる痛み,②がん治療に伴う痛み(化学療法による末梢神経障害性疼痛など),③がんによる衰弱に伴う痛み(褥瘡など)がある.がん医療の臨床では,身体の痛みだけでなく,社会的苦痛やこころの苦痛(スピリチュアルペインや病的な精神症状)をも含めた全人的苦痛(トータルペイン)に対応することが必要になる.近年は,がん治療の進歩によりがんサバイバー〔p.134〕が増加しており,がん性疼痛の慢性疼痛化が問題となっている.非がん性慢性疼痛 〔p.124〕治療に要すると予測される時間を超えて持続する痛み,あるいは進行性の非がん性疾患に関連する痛みと定義される.単に慢性疼痛ともよばれる.手術後に遷延する痛み,帯状疱疹後神経痛,有痛性糖尿病神経障害,整形外科疾患(変形性関節症,腰痛症,関節リウマチ)などが代表である.難治性の非常に強い痛みを生じる幻肢痛,複合性局所疼痛症候群や脊髄損傷後疼痛などもある.治療においては,オピオイド鎮痛薬は慎重に使用する.オピオイド鎮痛薬の乱用や依存が生じると社会にも混乱をもたらすため,オピオイド鎮痛薬は厳選された一部の慢性疼痛患者に使用されるべきである.略 語●γ-アミノ酪酸(GABA):γ-aminobutyric acid123痛くて動けない●❸2次ニューロンが,脊髄後角から視床まで刺激を伝達する.●❷1次ニューロンは脊髄後根から脊髄に入り,グルタミン酸やサブスタンスP〔p.10〕を放出して,2次ニューロンへ刺激を伝達する.●❶末梢で,炎症・熱刺激・機械的刺激が発生する.炎症部位では,ブラジキニン(発痛物質)が産生され,末梢の侵害受容器が刺激される.炎症熱刺激機械的刺激〔末梢〕ブラジキニングルタミン酸やサブスタンスP侵害受容器GABA神経系痛みがやわらいだ!〔中枢〕知覚野(大脳皮質)視床(間脳)中脳延髄痛みは組織損傷に関連する 痛みとは痛みを感じる経路 痛覚伝導路監修医学:山田圭輔薬学:鈴木勉鎮痛薬痛み脊髄後角上行性痛覚伝達系下行性痛覚抑制系鎮痛薬痛みと鎮痛薬

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